大家さんのAさんは経営するアパートで借主のBさんから天井から雨漏りがあるので修理して欲しいと依頼されましたが、しばらく放置していました。その結果、室内にはカビが大量発生し、バッグなどの革製品にカビが生えて破損してしまいました。そして、Bさんから損害賠償を請求されることに。このような個人の持ち物までも賠償しなくてはならないのでしょうか?

今回のように室内にカビが生えて損害を与えてしまったような場合の修繕義務については、大家の修繕義務を否定した裁判例があります。

ここで補足として申し上げると、修繕義務を否定した点については、雨漏りの修繕義務が大家にあることを否定したわけではありません。建物の不具合があったから雨漏りが生じたわけなので、修繕の義務は当然に大家にあるわけです。ここで問題となるのは、室内にある個人の持ち物にも修繕の義務が及ぶのか?つまり、損害賠償の範囲の問題ということです。民法では416条で規定されていますが、大雑把な言い方をすると、損害が「予見できたか否か」で賠償できるかが決まります。予見できたら賠償範囲には含まれますし、予見できなければ賠償範囲に含まれないことになります。

本件のように、雨漏りで室内にカビが発生する一方、修繕が遅延したことによって革製品にまで被害が及ぶことを大家が予測できないことはやむを得ないでしょう、という結論になりますね。したがって、Aさんは雨漏りを修繕せず放置していても、直ちに賠償請求されるわけではありません。