まだ解決していない課題について、当事者意識を持って取り組むトレーニングを積まないかぎり、問題を解決する真の思考力は身につかない。

本質的な課題を突き止めるためには、先入観を持たずに、全体像を把握するよう努めるべきだ。

情報の収集と分析は同時進行させるべきである。情報を集め、そこから何が見えるのかを書き出してみると、その情報がどんな意味を持つのかが俯瞰的に分かるようになるし、何が必要なのかの検討もつきやすくなる。

大前式ケーススタディ
未解決の課題を用意する
著者が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)では、「今起きている正解のない課題」としてのケーススタディを取り上げ、「もし自分がこの企業の社長だったらどうするのか」を考える訓練を行っている。

当事者意識を持つ

リーダーの立場にいるシミュレーションをしたうえで徹底的に考えることは、ケーススタディをおこなう上で非常に重要だ。どれだけ当事者意識を持って課題に向き合うかで、緊張感も変わってくる。

実際のリーダーたちと同じ条件に立ちながら情報を分析し、自分なりの結論を下すというトレーニングをしていかなければ、問題を解決するための思考力は鍛えられない。

ディスカッションをする
課題を自分ひとりで抱えこんでいても、答えを出せないことは多い。特に、その企業や業界について、自分は十分に知っていると過信しているときは要注意だ。そうした思い込みは、思考を止める原因になってしまう。

そんな時は、ディスカッションを取り入れよう。複数人で深い議論をすることで、思考の壁を壊し、思考回路を変えていく。そうすれば、思いもつかなかった発想が出てくるようになるはずだ。

情報収集をしながら分析する
対象が持つ本質的な問題を突き止めるのが、情報収集の究極の目的である。そのためには、まず全体像を把握する必要がある。これを怠ると情報が不足したり、重複を起こしたりする可能性が高い。

それに加えて大切なのは、最初から結論を予測してはいけないということだ。先入観を持って情報収集をすると、得られるものが限られてしまう。全体像を把握するためには、企業の情報だけではなく、その市場や競合の情報も収集するべきである。そうすれば、企業の抱えている本質的な課題も明確になってくるだろう。

さらに、情報は収集するだけでは不十分だ。情報の収集と分析は、同時並行的に進めることが理想である。情報を集めたら、そこから何が見えるのかを書き出してみる。そうすることで、その情報がどんな意味を持つのかが俯瞰的に分かるようになるし、次に何を集めればよいかの検討もつきやすくなる。
図書館とネットを駆使する

普段の情報収集の方法として、著者は「土曜の午後のネット出張」を提案する。自分が知りたい業界のトップ3にいる企業の情報を、土曜の午後の時間を使って収集するのだ。そうすることで、企業のトップに最も必要なICT(情報通信技術)感覚を養い、思考力を高めることができる。

根本的に考える

シナジー効果を狙う

問題の多いアイドルエコノミー

互いの利益につながる方法を

SPAモデルの強さ

ニトリホールディングス(以下、ニトリ)は増収増益を続けており、国内の家具専門小売業界においては2位以下と大きな差をつけている。その秘密は、商品の企画から製造、販売までを自社で行う「SPA」という製造小売りモデルにある。

このモデルを採用したことにより、卸売りや流通業者へのマージンカットに加え、消費者動向を速くチェックできるようになった。国内の家具市場が縮小傾向にあるなか、ニトリの総売上高が4,000億円を超えているのも、SPAモデルによるコスト管理の賜物だといえる。