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競争力の高いユニクロなどの企業では、まず消費者にとって「値ごろ感」のある価格を決め、それでも利益が出るように原価を逆算し、その範囲内で商品を作っている。
販売をあえて限定することで購買までのハードルを高め、消費者に商品を手に入れたいという欲求を増大させる戦略もある。企業には、複雑な消費者心理を巧みに刺激することが求められる。
企業は値引きやおまけなど様々な販促戦略を打ち出すが、「即時型」「延期型」のように効果の違いを理解した上で、複数の手法を組み合わせながら最適な戦略を打つ必要がある。

価格帯が狭いユニクロが繁盛するのはなぜか?
競争に強い企業では、スピーディでひとひねりした価格のつけ方がされている。

著者が注目するユニクロ、無印良品、ハニーズ、しまむら、ニトリに共通するのは、プライスライン(価格帯)がとても狭いということだ。これにより、お客の「考えるコスト」を軽減している。価格がシンプルに1つか2つくらいに設定されていると、商品ごとに品質や価格を見比べて検討する必要がない。

価格設定は思わず商品に手が伸びる「値ごろ感」がある。こうした企業では、まず市場調査などの手法を使って消費者にとって値ごろ感のある価格を決め、その設定後に利益が出るように原価を逆算し、その範囲内で商品が作れるように調達先や加工方法を決める。これを「原価逆決め方式」と呼ぶ。なお、電力・ガス会社などでは必要なコストに一定の利益を乗せて価格を決める「原価積み上げ方式」が採用されている。


個人経営の店はメニューを絞って一品当たりの価格を高めに設定する必要がある。個人経営では対応できる客数に限度があるため、客数よりも客単価で利益を上げなければいけないからだ。

数量よりも利幅を狙う、プレミアム価格戦略
工房系ランドセルメーカーのプレミアム価格戦略

一時は割安でデザイン性も高い大手企業の製品が市場を席巻し、工房系メーカーは苦境に陥ったが、ECサイトに新しい販路を見出した。SNSの普及とともに口コミが影響力を増したことで、工房系メーカーの「売り切れ御免」のビジネスモデルは買い物競争を煽ることになった。

以前は毎年10月ごろから2月ごろまで売れ続けるというのがランドセルの市場だったが、今では5月から7月の間に希望のメーカーの品を確保しなければいけない、いわゆる「ラン活」現象も起きている。そして、孫のためならお金を惜しまない祖父母たちがラン活に巻き込まれることによって、付加価値(プレミアム)のある商品の価格が高騰していった。

。代表的なのは「期間限定」と「数量限定」だ。今シーズン限り、先着100名様まで、という売り方だ。ご当地ビールのような「地域限定」もよく見られる。ネットでしか買えないというような「チャネル限定」や、会員制スーパーなどの「顧客限定」という方法がある。いずれのタイプも、あえて限定することで購買のハードルを高め、商品を手に入れたいという欲求を増大させる。

著者の研究室で大学院生が行なった調査結果によると、こうした販売は男性よりも女性に効果があるという。おそらく買い物の知識や経験の量の差が影響して、買い物に慣れた女性たちは刺激や変化を求めて限定品を好むのでは、と考えられる。また、日本人は外国人に比べて限定品に弱いといわれる。日本人は「みんなと同じがいい」と考える特徴があるものの、「みんなも持っているけれど、その中でも特別なものが欲しい」という複雑な消費者心理が働くためだ。

価格の調整と顧客満足
ロングセラー商品は値下げも値上げもしてはいけない
何十年も愛されるようなロングセラー商品には「ローテク」で作られているという共通点がある。ハイテク製品は次々と新しい技術が生まれるため、陳腐化しやすいのだ。そしてロングセラー商品の欠かせない条件として、値下げをしないことがある。長く愛用される商品が値下げをすると、イメージが低下してしまう。つまり、トップメーカーは価格競争に参加することは慎重でなければならない。

また、値上げもタブーである。日清の「カップヌードル」が10年前に卸売り価格を15円値上げしたとき、瞬間的にだが売上は、値上げ前の月に比べて52%も落ち込んだという。

消費者は商品の変化に敏感なので、ロングセラー商品の味や品質、そして値段を変えることは時に命取りになる。

「値引き」と「おまけ」を使い分ける
メーカーや小売店は値引きやおまけなど様々な販促戦略を打ち出す。が、メーカーや小売店にとって、値引きとおまけは意味合いが違う。値引きは販売数量が増えないと売上が下がり、ときによってはブランドイメージを傷つける場合がある。一方で、おまけは利益率が下がるが売上は下がらない。