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自分や他者の心理状態や状況に気づいているという「気づき」と、自分や人のあるがままの状況を受け入れる「受容性」が高いタイプの人はストレスに強い。「気づき」も「受容性」も、「今ここにあること」に集中するマインドフルネスの考え方によって高めることができる。
長引く体調不良を抱えている人は、体に意識を集中してみると、不調が心からきていることに気づけるかもしれない。また、仕事のストレスは、自分の時間や心の調子をコントロールすることで減らすことができる。

ストレスの放置は厳禁
ストレスはコントロールできる

仕事にはストレスがつきものだが、ストレスを放置することは禁物だ。ストレスがたまりきっている状況だと、集中力に関係するドーパミンやアドレナリンなどの「脳内ホルモン」が機能不全を起こすといわれている。そうなると、次第に雑念で頭がいっぱいになり、集中すればすぐに終わるようなことでも何時間もかかってしまうようになる。ここまでくると、もはや本人の気力でどうにかするという問題ではなくなってしまう。

ストレスをなくすことはできないが、予防し、対処することはできる。また、ほどよいストレスは集中力の高まった「フロー状態」を生み出すので、自らの成長につなげることもできる。

ストレスを軽減するマインドフルネスの考え方
ストレス耐性を決める「気づき」と「受容性」

「ストレス」とは、まっすぐなものを曲げようとする際などに生じる物理的な力のことである。転じて心に負荷がかかった状態を「ストレス」と呼ぶ。やりたくないのにやるしかないなど、理性と感情に摩擦が起こって生まれる、精神的な軋轢がストレスだといえる。

ストレス管理の第一歩は「未病」を見逃さないことだ。風邪をひきやすい、寝つきが悪い、などの兆候があれば、病気になる一歩手前の「未病」の状態だ。これを放置するとメンタル疾患になってしまうことがある。

マインドフルネスとは「今、この瞬間の体験にだけ意識を向けている」という状態そのもののことだ。日頃からマインドフルネスを実践している人は、ひとつのことに集中でき、脳のエネルギーのロスも非常に少ないのだという。

疲れているときは思考の中枢で前頭葉の機能が低下しているため、感情的になりやすくなる。

怒りの原因がわかると、怒りが少しだけであっても軽減されるだろう。マインドフルネスを活用することで、思考を止めてしまうことを防ぎ、視野を広げ、新しい選択肢に目を向けることができるようになる。

また、ネガティブな気持ちのときにおすすめの行動のひとつは「あえて関係のない行動をとる」ことだ。著者は、ネガティブな気持ちに気づいたら腕時計を反対の手に移動させるという「インターベンション・ブレスレット」を実践しているという。また嫌な気持ちが湧き上がったら、また反対側へ移す。こうすることで、「自分はネガティブな感情をもっているのだ」ということに自覚的になり、そのこと自体がストレスの低減につながるのだ。

体調を整えることで心の状態も整う
長引く体の不調には「ボディスキャン瞑想」

なんとなく疲れている、体調を崩しやすいという人は、それが体からのSOSである可能性を考えてみよう。体のちょっとした変化に気づくことは、心の休息につながる。

ハードな運動をしていないのに体が疲れている、週末はぐったりしてつい寝だめしてしまう。そんな人は「体力がないからジムに通ったほうがよいのかな」と考えることが多いが、じつは体力の問題ではない場合が多い。なかなか疲労感が抜けないのであれば、それは精神的疲労かもしれない。ハードな運動でもしない限り、めったなことで体は疲れないものだ。現代人の体の疲れは、十分な睡眠と栄養でごく短期的にとれる程度のものである。それが長引くのであれば、心の疲れを疑おう。

だるさがぬけない人には「ボディスキャン瞑想」がお勧めだ。これは、あお向けになって頭からつま先まで全身をスキャンするイメージでひとつひとつの部位に気持ちを集中させて、深呼吸でリラックスしていくというマインドフルネスだ。これを行うと、じつは体にあまり問題が出ていないことに気づいたりする。すると、痛みや疲れの原因は心の問題なのではないかと気づけるのだ。

睡眠はストレス管理の基本

体調を整えるための手軽な方法は睡眠だ。

昼寝には疲労回復に大きな効果が期待できる。横になるのではなく、席に座ったままのうつらうつらの短い居眠りが効果的だ。適度な深さの睡眠をとることで疲労を解消し、集中力を高めた状態で、午後の仕事に取り組むことができる。

ストレスをためない仕事術
引き伸ばしはストレス増加の原因に

先延ばしは大きなストレスになるということだ。手をつけることにストレスを感じるかもしれないが、先延ばしをしているとその間中そのことが気になってしまい、ストレスにさらされる時間を引き伸ばしていることになる。仕事はあえて前倒して行ったほうがストレスをためずにすむ。

整理整頓でストレス軽減
また、デスク周りはキレイにしていたほうが脳の負荷が少なくてすむ。

仕事はじめと仕事終わりにおすすめしたい習慣が、デスク周りの掃除・整頓だ。「仕事じまい」として儀式にすることで「あれもやらなきゃ」「明日はあの続きをやろう」といった考えから離れ、「ここからは自分の時間」と区切りを持つこともできるようになる。このようにルーティンを活用することで、自分の心の調子を自分で積極的にコントロールすることができるのだ。

仕事で体を壊す価値は?
限界まで働いて、いよいよ出勤もままならないという状態になった人が、仕事を思い切って休んでみると、人生の価値観や優先順位が変わるという経験をすることがある。それまでは仕事が1位だったのが、プライベートや家族が同列首位になったり、優先度が逆転したりする人もいる。体調を崩しがちになったら、自分の生きがいや心身の健康を犠牲にしてまでやらなければいけないものはあるのだろうか、と自分の心に問うてみてほしい。

対人関係でもう悩まないために
「あいさつ」は心を開いていることのサイン

人間関係は、一番のストレスの要因だといえるほど、悩みの尽きないものだ。周囲との関係がうまくいかない人に、ぜひ意識して取り入れてみてほしいことが、「あいさつ」だ。あいさつは、自分が相手に心を開いていることを表現する、もっとも簡単な手段だ。

相手の反応は気にせずに「一方通行でもいいや」くらいの気持ちであいさつをすることがポイントだ。もしあいさつが返ってこなくても、つまり、相手が不適切な態度をとったとしても、それはその人の課題であってあなたの課題ではないのだ。近年流行したアドラー心理学では、「課題の切り分け」と呼ばれている。「相手の問題だから自分が気にする必要はない」と思えば、気持ちが楽になるだろう。

マインドフルネスで他人の評価に振り回されない
自分がどう思われているか、人の目が気になることも対人関係のストレスだ。自分が思っているほど他人は気にしていないと理屈ではわかっていても、なかなかそうは割り切れない。そんなときは、短い時間でも呼吸や体の感覚に意識を向けるようにすると効果的だ。

「今ここで感じているもの以外は事実ではない」と思うことで、余計なことに過剰に反応しなくてすむようになる。

他人の心は操作できないし、他人が自分をどう見ているのかは想像でしかない。ここにないものを想像して、もっと言えば「妄想」してそれに振り回せられないように、今ここにあることに集中しよう。